【2023年12月号】絵本づくりの仕事場より／センバ・太郎・景山あき子

　“ 街まちに流れるジングル・ベル、たくさんの飾り物をつけた大きな樅（もみ）の木、トナカイに引かれた橇（そり）に乗った、白いお鬚（ひげ）の、赤い服を着たサンタクロース ” と、眼に浮かぶクリスマス、この聖夜、このお祝いのお話を絵本にと、私に楽しい仕事だ。しかしペンをとれば、その１ページから、クリスマス以前から、始めなくてはならないことに気がついて、改めて、心の浅い私には、大きな重荷になってきました。
　さいわい至光社の皆さんから、たくさんの参考資料を寄せていただいて、私の絵本作りの仕事が、始まった次第です。たくさんの資料の中に、自分なりに頷けるものがひとつふたつあっても、多くは初めて知らされるもので、聖書の世界の広さと深さに、難しさを感じながら、ペンを1ページ２ぺージと運んでいきました。
　そしてその都度、「これでいいのか」「これでいいのか」の繰り返しでした。
　東北線に揺られて東京へ、そして至光社へ、私の手には「絵本・みんなのクリスマス」の絵原稿が、しっかりと握られている。国電の窓から見える、都市化の町の所どころに、また稲穂が見えて走る。ふと私は稲穂を通して、聖書の世界が現実にここにありと思った。「絵本・みんなのクリスマス」の絵原稿からその温かみが、私の手に伝わってくるようだった。（1978年『絵本づくりの仕事場より』の文章から）
 

 

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　この12月号では、世界で最初のクリスマスのときのよろこびを、静かに展開し、一人、二人のよろこびが、だんだんと、三人、四人のよろこびになり、そして遠くに住む人たちにも、また、今日のわたしたちにも伝わってきたことを物語っています。
　「神さまがわたしたちに話しかけ、わたしたちと一緒にいてくださる」という、一番大きな出来事と、よろこびは、星のかがやき、天使の歌や語りかけを通して、野原で夜通し羊の番をしていた羊飼いに届きました。そして、このうれしい知らせをうけた羊飼いたちは、夜中だというのに、軽い足どりで光る星を目印に、救い主をおがみに出かけました。
　幼い赤ちゃんの救い主を、静かにおがんだ羊飼いたちのこころは、大きなよろこびに充たされ、今度は自分たちが見たこと、分かったことをベツレヘムの村の人たちに知らせます。長い間、みんなが救い主が来てくださるのを待っていたからです。よろこびを自分のものだけにしておけない羊飼いたちのこころの温かさ、軽やかさが感じられます。
　遠い東の国でも、同じ輝く星を見た三人の博士たちは、ベツレヘムまで旅をしてきました。こころの中にうけた導きを信じて、長い旅をしてきたこの三人の博士たちも、羊飼いたちと同じように、救い主をおがんで帰ってから、この大きなよろこびを、国の人たちに話してきかせたことでしょう。
　今日、わたしたちがお祝いするクリスマスは、このクリスマスなのです。プレゼントをいただいたり、あげたりしながら、わたしたちも、みんなで、救い主御誕生のよろこびを分かち合いましょう。（2013年『この絵本をめくりながら』の文章から）