【2024年2月号】絵本づくりの仕事場より/山崎陽子・篠崎三朗

2024.01.05   仕事場

 

 

 この物語は、『善造どんと狸汁』という題で書いた朗読ミュージカルです。舞台の印象が強く、絵本にはなりにくいと思っていたのですが、篠崎先生の絵を拝見してびっくりしました。絵の中に、そっくり舞台があったからです。そのまま舞台装置になりそうな善造どんの家や、子狸の可愛らしい目に見とれていたら、風の音や、かあさんの子守歌や、BGMまでが聞こえてきました。
 最後のページを閉じるときたしかに観客の拍手が聞こえたような気がしました。私も、今夜は、きっと“ええ夢”が見られることでしょう。

山崎陽子

 


 

 駅前のコーヒー屋へ行く途中、小犬ほどの動物に出合った。小犬かなと何気なく近よった。相手も私に気づき、一瞬立ち止まり、目と目があった。濃いセピア色にふちどられたまんまるの目、太めのしっぽ、まぎれもなく子狸だった。裏山で何度か狸を見かけたことはあったが、いつも夜半である。狸は夜行性のはずだが、ねぼけていたのか、何か事情があったのか、昼間からフラフラと……。
 それから数週間後に、この絵本の制作のお話があった。あまりにも偶然なので、狸にばかされたような気分になったが、妙でうれしい出合いであった。
 

篠崎三朗

 


2002年『絵本づくりの仕事場より』の文章から

 

 

▼ 山崎陽子

東京都生まれ。童話作家、ミュージカル脚本家。立教女学院卒業後、宝塚音楽学校、宝塚歌劇団を経て結婚。童話、絵本、ミュージカル脚本、エッセイ、講演など多方面で活躍。絵本『うさぎの ぴこぴこ』(至光社)、『おばあちゃんと セブン』『はりねずみの ピックル』(女子パウロ会)。『ぼくのはな さいたけど…』(金の星社)は、令和6年度版小学校道徳教科書『新編 新しい道徳1』に掲載予定。
青春小説『あのう…ですから、タカラヅカ』(小学館)、エッセイ『しあわせは いつも いま』(ユーリーグ)。独自の舞台「朗読ミュージカル『山崎陽子の世界IV』」で平成13年度文化庁芸術祭大賞を受賞。作家の故・遠藤周作氏主宰の素人劇団「樹座」では座付作者を20年間務めた。

 

▼ 篠崎三朗

福島県郡山市生まれ。桑沢デザイン研究所専攻科卒業、杉田豊氏に師事し、グラフィックデザイナーとして独立。東海大学自然博物館のアートディレクター、小中学校の教科書のアートディレクターとして、社会科・音楽・国語等教科書の新しいデザイン化に従事する。40歳で最初の絵本『あかいかさ』(至光社)を出版。デザイナー、イラストレーターの仕事に従事しながら、絵本の制作に携わる。
ミュンヘン国際児童図書館発行の「White Raven」誌に『あかい かさ』『わあいわいゆき』(至光社)、『おじいさんのランプ』(小峰書店)が収録される。高橋五山絵画賞、現代童画会「ニコン賞」、内閣府「障害者の日」の公募ポスターの審査員、日産絵本と童話のグランプリ審査員などを務めた。日本のナイーブアート画家7人展(ハンガリー・ブタペスト)、現代日本の絵本画家50人展(上海・北京)、その他個展、団体展多数出品。

 

 

 

 


 

 

 

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