【2024年1月号】片柳弘史神父とよむ こどものせかい

2023.12.01   エッセイ

 

 


いちばん偉いのは誰か

 

 聖書の中に、自分たちのうちでいちばん偉いのは誰かと言い争っている弟子たちに、「あなたたちの中で偉くなりたい人は、みんなに仕える人になりなさい」とイエスが教える場面があります。本当に偉いのは、「自分は偉いんだ」と思い込んで人を見下す人ではなく、目立たないところでみんなのために奉仕する人だというのです。その考え方からすれば、この絵本のメトロさんこそ、みんなの中でいちばん偉いといえるでしょう。

 来る日も来る日も「ガタタン ゴトトン」、暗いトンネルの中を走り続けるメトロさん。陽の当たる場所をものすごいスピードで駆け抜ける超特急を、ちょっとうらやましいと思うこともありますが、自分の持ち場を離れることは決してありません。目立つことはないけれど、自分にはとても大切な役割がある。家族のために一生懸命働くお父さんやお母さん、夢をかなえるために学校へ通う学生、病気を治すために病院に通う人、大好きな誰かに会いに行く人、さまざまな人のさまざまな思いを運ぶのが自分の使命だと知っているからです。

 この絵本を読み聞かせながら、「メトロさん、ほんとうにえらいよねぇ」と子どもたちに話しかけてみてはどうでしょう。実際のところ、この世界で本当に偉いのは、自分は偉いと思い込んで威張り散らしている人ではなく、たとえ世間から注目されることがなかったとしても、家族のため、仲間のため、みんなのために一生懸命、働いている人なのです。ローマ教皇のフランシスコは、そんな人たちを「生活の中の聖人」と呼んでほめたたえました。この絵本を読んだ子どもたちの中から、そんな聖人が生まれることを心から願っています。
 
 

 

 


◇2024年1月号『ガタタン ゴトトン メトロさん』 宇治  勲・絵と文◇

 

 

 

▼ 片柳弘史 プロフィール

カトリック宇部教会主任司祭。1971年埼玉県生まれ。1994年慶応大学法学部法律学科卒業。1994〜95年インド・コルカタにてボランティア活動。マザー・テレサから神父への道を勧められる。1998年イエズス会入会。2008年上智大学大学院神学研究科修了。同年、司祭叙階。現在は山口県宇部市で3つの教会の主任司祭、3つの幼稚園の講師、刑務所の教誨師。

◆著作に『みんなのやさしいおかあさん マザー・テレサ』(絵・つるみゆき/文・片柳弘史、至光社)『こころの深呼吸〜気づきと癒しの言葉366』『やさしさの贈り物〜日々に寄り添う言葉366』(教文館)、『世界で一番たいせつなあなたへ〜マザー・テレサからの贈り物』『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)『ひめくりすずめとなかまたち』(キリスト新聞社)など。

◆Eテレ『グレーテルのかまど〜マザー・テレサのチョコレート』、テレビ朝日『ぶっちゃけ寺〜キリスト教特集』などに出演。ブログX(旧Twitter)facebookを通しても情報発信している。

 

 


 

▼こどものせかい2024年1月号
 

『ガタタン ゴトトン メトロさん』をみる

 

 


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