【2023年4月号】片柳弘史神父とよむ こどものせかい
神さまを感じる
「神さまは、本当にいるのかもしれない」と感じるのはどんなときでしょう。
わたしは、思いがけず何かとてもよいことがあったとき、「こんなわたしに、こんなよいことが起こるなんて、神さまは本当にいるんだな」としみじみ実感します。うれしくて、うれしくて仕方がないとき、心の中から自然に湧き上がってくる、「こんなわたしに、なぜこんなによいことが」という問いかけ。その問いかけが、わたしたちを神さまへと導くのです。
「さくらいろのかぜ」の主人公の女の子に起こったのも、きっとそういうことでしょう。
初めての幼稚園で、周りは知らない人ばかり。不安やさびしさの中で、うっかり転んで泣きそうになった女の子に、知らない男の子が、「だいじょうぶ?」とやさしく声をかけてくれます。その子と一緒に空を飛ぶ大きな鳥を見上げているうちに、不安やさびしさはどこかに消えてしまいました。
そんな女の子を、桜吹雪のあたたかい風、「さくらいろのかぜ」が包み込んだのです。そのとき女の子は、神さまが自分を見守っていてくれることに気づきます。女の子を包み込んだあふれるほどのやさしさが、女の子を神さまへと導いたのです。
「神さまなんているのかな」と、頭で考えても結論は出ません。神さまは、心で感じるものなのです。「こんなわたしに、なぜこんなよいことが起こるのだろう」「こんなわたしに、なぜこんなにやさしくしてくれるのだろう」、心の中から湧き上がるそんな問いかけが、わたしたちを神さまへと導くのです。
新しく始まった幼稚園の生活の中で、子どもたちがそんな体験を一回でも多くできるよう、心からお祈りしています。
◇2023年4月号「さくらいろの かぜ」 近藤えり・絵と文◇
▼ 片柳弘史 プロフィール
カトリック宇部教会主任司祭。1971年埼玉県生まれ。1994年慶応大学法学部法律学科卒業。1994〜95年インド・コルカタにてボランティア活動。マザー・テレサから神父への道を勧められる。1998年イエズス会入会。2008年上智大学大学院神学研究科修了。同年、司祭叙階。現在は山口県宇部市で3つの教会の主任司祭、3つの幼稚園の講師、刑務所の教誨師。
◆著作に『みんなのやさしいおかあさん マザー・テレサ』(絵・つるみゆき/文・片柳弘史、至光社)『こころの深呼吸〜気づきと癒しの言葉366』『やさしさの贈り物〜日々に寄り添う言葉366』(教文館)、『世界で一番たいせつなあなたへ〜マザー・テレサからの贈り物』『何を信じて生きるのか』(PHP研究所)『ひめくりすずめとなかまたち』(キリスト新聞社)など。
◆Eテレ『グレーテルのかまど〜マザー・テレサのチョコレート』、テレビ朝日『ぶっちゃけ寺〜キリスト教特集』などに出演。ブログ、twitter、facebookを通しても情報発信している。
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▼作者のことば・プロフィール
絵本づくりの仕事場より